2014年2月19日水曜日

【■■■■■■■■II世の邪気眼レポ】伝説のゲームセンターからの脱出【SCRAP】

・2014/1/24, 横濱はじめて物語
1号3号5号7号

(※この記事は7号こと■■■■■■■■II世の記憶を■■■■■■■■III世がまとめたものです。)
リアル脱出ゲームセンターシリーズvol.1
伝説のゲームセンターからの脱出
その筐体には神が宿る
世界で最初に生まれたゲーム筐体がある。すべてのゲームはここから生まれ、あらゆるアイデアはここから広がった。 あなたはその伝説のゲームを求めゲームセンターを訪れた。しかし、このゲームセンターには出口がない! 伝説のゲームに電源が入ったとき、あらゆる謎は解き明かされ、あなたは脱出できるという。
コインを握り締めてゲームセンターに通ったすべての人にお送りする、ゲームセンターカルチャーへの渾身のオマージュ! あなたはこのゲームセンターから脱出することが出来るだろうか?




Q. 神はいると思う?
A. インターネットで見た


 神と言われて想像するものは人それぞれだろう。 しかし少なくとも私がこれまでの人生において出会った「神」と呼べる存在は一人しかいない。

 ドラゴン山下。

 それが神の通り名だった。

 アーケード対戦ゲーム全盛の頃、私は腕利きの格闘ゲーマーの一人であった。 各地の有名ゲームセンターに出向きライバル達としのぎを削る、そんな生活を続けていた。

 しばらくして、インターネットの発達によりネット対戦が容易になった。 これにより格ゲー人口は飛躍的に増えたが、そこでも私は常に上位ランカーとしての地位を保っていた。

 しかしそんな私が、ただの一度も勝てなかった相手がいる。 私だけでなく、他の誰も勝っているところを見たことがない。 その者の名こそ、ドラゴン山下。 あくまでネット上での対戦なので、本人と直接会ったことはないし、素性も謎に包まれている。 その余りの強さの上に存在の奇妙さも相まってか、次第にその者は「神」と呼ばれるようになった。

 何度挑戦するも、ついに「神」に勝つことはなかった。 やがて時代は3D格闘ゲームへと移ってゆき、次第にゲーマー達の「神」への興味も薄れてゆく。 そしていつしか「神」はネットの世界から姿を消していた。



 あれから何年が経っただろうか。 「神」への渇望が復活したのは、ある噂を耳にしたからだった。

 その筐体には、神が宿るー。

 それは、あのときのがむしゃらな気持ちを再び思い起こさせるに十分なフレーズだった。

「神」が何者なのかを確かめたい。
「神」ともう一度対戦をしたい。
「神」を倒したい。
「神」になりたい。

 どれも本当の気持ちだけど、真実を端的に言い得てはいない。 多分、私を突き動かすこの衝動はもっとセンチメンタルでもやっとしたものだ。

 とにかく、その日から私は「神」が宿ると言われる筐体を求めて、全国のゲームセンターを行脚した。 そしてついに辿り着いたのが、横浜の外れにある、どこか郷愁の漂う古めかしいゲームセンターだった。

「お待ちしておりました、■■■■■■■■。お噂はうかがっております。さあ、こちらへ」

 こちらから探すまでもなく、支配人らしき人物が私を見付けて、一般客が立ち入れない部屋へ案内してくれた。

「これが、『神』…」

 出会いは呆気ないものだった。 見た目には、当時どこにでもあったようなごく普通のアーケード筐体。 コインを入れると電源が入り、ゲームが起動する。 ストリートバトラー2の懐かしいロゴ。 私が最も熱中し、対戦に明け暮れ、そして己の限界を知ることになった、まさにそのゲームだ。

 1PLAYを選択すると、対戦相手のCPUの名前が表示される。

 DRAGON YAMASHITA。

「神」は初めからここに眠っていたのだ。 ここからネットに接続し、来る日も来る日も挑戦者達を退けていたというのか。

 何故だか分からないが、涙があふれてきた。

「神」の存在意義はただ対戦をすることだった。しかしその余りの強さ故に、 次第に対戦相手が離れていき、やがてこんな場所で孤独に眠ることになっていたというのか。 だとするなら、そろそろ引導を渡してやらなければならないのかもしれない。

「挑戦は3本勝負、1回限りでございます」

「ああ、言われるまでもない」

 まずは1本目。お互いに様子見から始まり、目立った攻撃は仕掛けない。

 やはりあのときから全く変わっていない。 1本目で相手の動きを完全に把握し、2本目、3本目で怒濤の攻撃を畳み掛けるスタイルだ。 多くの挑戦者は、1本目が案外簡単にとれることで生まれた心の隙を突かれる。 だからこそ、1本目は目立った動きをしてはいけない。これがドラゴン山下対策の第一歩だ。 結局お互いほぼ体力ゲージ満タンのまま、 タイムアップ間際にこちらが放った波動拳による「削り」で、1本目を奪取する。まずは作戦通り。

「ほう、これはこれは…」

 支配人の愉快そうな声が聞こえる。 そう、私も支配人も重々分かっている。所詮こんな作戦は小細工。 結局はこの後の圧倒的な攻撃の雨嵐を凌がないことには、勝利は訪れないのだ。

 果たして、2本目においてドラゴン山下の本領が発揮されることとなる。 1本目において極力こちらの情報を与えなかったとはいえ、そんなことはお構いなしに波状攻撃を仕掛けてくる。 反撃の機会を窺う暇もない、あっという間のKO劇。

 これであっさりとイーブン。

 これこそがドラゴン山下。あの頃と全く変わっていない、まさに「神」の動き。 そう、全く変わっていないのだ。あの頃と。

 だからこそ、勝てる。

 その思いは確信に変わっていた。

「支配人さん」
「何でございましょう」
「神はいると思うかい?」
「…?」

 怪訝な表情を浮かべる支配人を横目に、運命の3本目がスタート。 1本目がこちらの情報を提供する番なら、2本目は相手の情報を収集するターン。 ドラゴン山下の動きは完全に把握した。 単にこの1本60秒の対戦で得た情報だけではない。 稼動当時の数年間に渡る「神」との戦い、その膨大な蓄積の全てがそのまま今のドラゴン山下に当て嵌まるのだ。

 負ける道理がない!

「おお、何ということだ!」

 思わず、支配人が声を荒げる。 それもそのはず。彼の眼前に繰り広げられていたのは、お互い一歩も引かない一進一退の攻防だったのだ。 おそらく、「神」と互角に渡り合える挑戦者はこれまでいなかったのだろう。

 しかし形勢は徐々にドラゴン山下の側に傾いていく。 だがここまでが予想済み! 体力ゲージが残りぎりぎりとなったところで繰り出す、おそらくはストリートバトラー史上最初で最後のコンボ。 これに全てをかける!

「マーガリンがぁ!!!」

「捕まえてぇぇ!!!」

「マーガリンがぁ!」

「画面端ぃぃっ!!!!」

「バースト読んでえぇっ!!!」

「まだ入るぅぅ!!」

「マーガリンがぁっ!!!!」

「・・・つっ近づいてぇっ!!!」

「マーガリンがぁ決めたぁぁーっ!!!!」




 音楽を掻き消す程の支配人の絶叫が響き渡る。

 ---決着。

 長きに渡る因縁に終止符が打たれた瞬間だった。 呆然と立ち尽くす支配人に声をかける。

「ドラゴン山下は強かった。しかしそれは変わらない強さだった。 格ゲーはあれ以降もどんどん進化していたんだ。私は最新のあらゆる格闘メソッドを吸収し、 変わりゆく強さを求めた。勝因を挙げるとすれば、そこだ」

「…これでようやく、ドラゴン山下は自由になれたのかもしれません」 

 支配人が筐体に両手をつきながら、声を震わせる。

「そして、これからはあなたが「神」になるのです
「何だって?」

 そう呟いた瞬間、強烈な目眩が襲ってきた。
「ここでは最強の者こそが「神」。「神」は敗れるまでこのゲームセンターから脱出できないのです」
「なん、だと…」
「楽しんでください、いつ終わらとも知らぬ宴を」

 そういい残し、支配人は去っていった。

「く、そ…。おのれ。必ず、必ず脱出してやるぞ!!  このゲームセンターから!! 必ずなあ!!







   ヤバイ!! これは脱出しなければヤバい!! 横濱はじめてものがたりのリアル脱出ゲームセンターがヤバすぎる!!

 訳の分からないテンションでやってきたのは 1号3号5号7号の4人。 1回10分で何度でも挑戦可能という、今までになかったシステムなので非常に楽しみにしてやって参りました。 レトロな雰囲気のゲームセンターを抜けた先に、思ったより大きなスペースを利用した リアル脱出ゲームセンターのブースがどーんと現れます。

 次の入場まで多少時間があったので、会場前の黒板(脱出成功者の名前とか書くやつ)に書いてあったなぞなぞで 何故かスタッフの方と盛り上がっていました。

 謎解きの中身はアジト系、あるいは少し大きめのなぞともカフェのCUBE、といった感じでしょうか。 レトロゲーマーのオッサンならニヤッとする演出もある一方、 若い人達(こう書くと自分はオッサンだなぁと思う)はゲームの歴史を体験するような感覚も味わえるのでは。

 もともと1回でのクリアは難しいという情報を得ていたので、1回目は無理せず情報収集に努める作戦でいきました。 果たして予想通り、1回目では大して進まなかったので、2回目までの間に集めた情報を整理して作戦会議。 まずはあれを試して、それが駄目なら次はこれを、といった具合に作戦を練った上で、2回目に挑みます。 そうすると、以降はあれよあれよと順調に進み、結局そのまま2回目での脱出成功となりました! 最後の方は例によってHAMの非摂動的な行動が、偶々当たったという感じでしたが(笑)

 特筆すべきは、アジトの公演と違って、制限時間を余り気にせず手軽に遊べるところだと思います。 こういう、ふらっと寄ってふらっと遊べる脱出ゲームが実はそれほどないので(なぞともカフェぐらい?)、 こういうタイプのイベントがもっと増えてほしいと個人的に思っています。 「リアル脱出ゲームセンターシリーズ Vol.1」と銘打っているので、 この後Vol.2, Vol.3 と期待してよいということなのでしょう!



この後、HAMがクレーンゲームの才能に目覚めてしまったのですが、それはまた別の話…。

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