・1号(ひでよし)、 2号(マッゾ博士)、 4号(メソドロジー)、 6号()、 7号(■■■■■■■■IV世)、 9号(ノーキン)
ヒミツキチラボ リアル脱出ゲーム vol.1
忘れられた実験室からの脱出
彼女は、涙すら知らなかった
ここは、廃墟と化した、とある実験室。
かつてマッド博士という、異常な頭脳の持ち主が
この世のすべてを解明するため、日々実験を繰り返していた場所だ。
彼の部下であったあなたは、残された文献からこの実験室の存在を知った。
地図にも歴史にも記載されていない、人々から忘れ去られた存在だった。
恐る恐るドアをあけると、そこには一体のアンドロイドがいた。
そっと手を伸ばして触れた瞬間
「侵入者発見。侵入者発見。実験室を包囲しました。」
警報とともに、あなたはこの実験室に閉じ込められてしまった。
誰からも忘れ去られた実験室、もちろん電話も繋がらない。
そこにあるのは、マッド博士が残したであろう不可解な暗号と
一体のアンドロイドのみ・・・
さて、あなたはこの忘れられた実験室の謎をすべて解き明かし
ここから脱出することが出来るのだろうか?
(注:以下の物語は妄想であり、実際の公演内容とは一切関係ありません。)
「侵入者発見。侵入者発見。実験室を包囲しました。」
その実験室に足を踏み入れた瞬間、警報が鳴り響く。 慌てて扉を開けようと試みるが、完全にロックされてしまったようだ。
そういえばマッド博士は昔から用心深い人間だった。 しかし彼のことだ、ここから脱出する術も用意されているに違いない。
さて、と実験室の中を見渡すと、部屋の中央に横たわった一人の少女が目に入った。 こんなところに生きた人間がいる訳がない。誰かの遺体か、と思い恐る恐る近づくと、 それは人の形をしてはいるが、ところどころが電源コードで外部装置と繋がれていた。
アンドロイド。
そう認識するのに時間はかからなかった。 晩年の博士は人との連絡を断ち孤独に研究を続けていたが、 まさかアンドロイドの研究に手を出していたとは。
彼女の耳に付けられたヘッドホンのような装置に文字が刻まれていた。彼女の名前だろうか。
「ラボ子…?」
そのとき、アンドロイドが徐に目を開いた。大きな紫の瞳がこちらをじっと見る。 目を開いたその表情は確かに人間よりはロボットに近い。
「コウチャノジカン…」
そう呟いたアンドロイドーラボ子は滑らかな動作で立ち上がり、自ら電源コードを引き抜き、 脇のキッチンへ歩いてゆく。 フラスコに葉を入れ、水を足し、アルコールランプに火をつける。
私は声もなくその動作を眺めていた。 これが、アンドロイドの動きだというのか。これを独りで作り上げたというのか。 つくづく、博士の天才ぶりには驚嘆せざるを得ない。
やがて紅茶が出来上がると、コップに移し替えてそれを主のいない机に持ってゆく。
「ハカセ、コウチャ」
誰もいない机に向かって、湯気のたつコップを差し出す。 しかし、それを受け取る者はいない。 ラボ子の手からコップが落ち、紅茶が床に撒かれる。
「コウチャ、オイシイ?」
ラボ子がそう語りかける。当然、どこからも返事はない。
しばらくするとラボ子は無言でコップを拾い上げ、床を雑巾で掃除すると、再び寝台へと戻っていった。
私は何ともやりきれない思いで、その様子を見ている他はなかった。 その動きはプログラムされたものには違いなかったが、 単なるルーチンワークをこなすだけの機械とも異なるように思えた。
「間もなく、この実験室を破棄します。間もなく、この実験室を破棄します。」
突如、二度目の警報が鳴る。同時に地響きのような音と振動。 上を見ると、天井がゆっくりと迫ってきている。 このままでは押し潰されてしまう!
「おい、君、目を覚ますんだ!」
ラボ子の肩を揺するが、反応はない。 そのとき、ふと閃いたことがあった。
私はマッド博士が使っていた椅子に腰を掛けた。
「ラボ子、紅茶を頼む」
そう言うと、ラボ子は再び立ち上がり、キッチンで紅茶を入れ始めた。 おそらくは「ラボ子」という呼びかけにより起動するようになっているのだろう。 幸いなのは、博士の声でなくともちゃんと認識してくれたことだ。 そうしているうちにも天井は迫ってきているが、この一連の動作は厳密にプログラムされているようだ。 今はラボ子を待つしかない。
「ハカセ、コウチャ」
ラボ子から差し出された紅茶を受け取る。
「ありがとう、美味しいよ」
相変わらず表情は固いラボ子。その顔から喜びの色は窺えないが、感情はあるのだろうか。 しかし今はとにかく時間がない。
「そうだ、ラボ子。扉を開けてくれるかい?」
こくり、と頷くとラボ子は扉の方へ向かい、キーを入力する。すると意外なほどあっさり扉は開いた。 これでこの実験室から脱出できる! 慌てて席から立ち上がり、実験室を出る。
しかし、ラボ子は立ち尽くしたまま部屋を出ようとしない。
「どうした、ラボ子。君もこっちに来るんだ」
首を横に振るラボ子。
「コウチャ、イレナキャ」
「そんなことを言っている場合じゃない!博士はもういないんだ!」
手を掴み引っ張るが、びくともしない。見た目からは想像もできない重量なのだ。 もう天井は頭に触れそうなところまで迫ってきている。
どうする? 所詮、彼女はアンドロイド。感情のない機械だ。このまま潰れて壊れたところで人道的に何の問題もない。そう自らを納得させ、彼女を置いて去ろうとしたとき。
「ハカセ、イナイノ?」
ラボ子の口から発せられた言葉は、私の足を止めるには十分だった。 表情は固く、読み取ることはできない。機械的な声には感情が籠っているようには聞こえない。
しかし、確かに彼女は泣いていた。
実際に涙を流している訳ではない。いや、おそらくそういう機能自体がない。 だが確かに、私にはラボ子の感情の動きが感じられた気がした。
自らが発した言葉の意味を理解しているのかどうかも分からない。 いや、そもそも「理解」とはどういうことだろう。 我々人間の感情にしても、所詮は脳内の電気信号的な何かの集まり。 一体、アンドロイドの彼女とどれほどの違いがあるというのか。
私は意を決して、ラボ子に話しかけた。
「ラボ子。博士はもうここにはいない」
「ハカセ、イナイ…」
「そう。だから、君の意志を聞かせてくれ。君は、博士の居場所を知りたいか? それとも、ここで帰らない博士を待ち続けるか?」
この土壇場でラボ子に選択を強いる私は、何と残酷な人間なのだろうと思う。 しかし彼女を動かすとすれば、それは彼女自身の意志に他ならない。 たとえそれが人間であれアンドロイドであれ。
いずれ、博士の死という事実を理解し、その上で彼女が自身の生き方を決める。 もしそういうことが出来るのなら、それはもう人間と何ら変わらない存在なのではないか。
時間が流れた。ほんの数秒だったのかもしれない。しかし、単純な問い掛けに対してコンピュータが答えを出すには、 それは余りに長い時間。それは彼女が「思考」しているということを示すに十分な時間だった。
そして、彼女の出した答えは。
「ワタシハーーー」
あああぁぁぁ
ラァァァァボ子ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
すみません。自分の妄想に感動の余り取り乱してしまいました。
タイトルの「忘れられた実験室」、「彼女は、涙すら知らなかった」というキャッチコピー、 そしてポスターのビジュアル。
これはもう完全に泣かせにきてますね。 泣かせに来られたら、それはもう泣くしかないですよね。 言っときますが、引くぐらい泣きますよ。私は。
ヒミツキチラボ初のオリジナルタイトル「忘れられた実験室からの脱出」(以下「忘ラボ」)、 実験的な試みもあるということで非常に楽しみにしていた公演です。
ちなみに、忘ラボに合わせて、 スピンオフ元である「マッド博士の異常な遺言状」の再演が同じくヒミツキチラボで ありましたので、予習も兼ねて参加してきました。 多少古い作品ですが、こちらも名作との呼び声が高く是非とも体験してみたかった公演です。 ひでよしとマッゾ博士はかなり以前に参加しており、二人ともべた褒めでした。 (というか、マッゾ博士の元ネタなので笑) 評判通り非常に完成度の高い作品でしたが、最近の公演、 例えば「摩天楼からの脱出」や「あるオークション会場からの脱出」なんかと比べると 全体的に謎の難易度は低め(特に分量的な意味で)かな、という印象もありました。 ここ数年で、参加者のレベルが上がっていることを受けてなのか、 難易度が上がっていることが窺えます。 謎クラスタは自重するようにしてください。
さて、予習も万全といったところでいよいよ「忘ラボ」に挑戦! 今回の公演、パズルガールズの皆様が制作に携わっているということで、 マッゾ博士がラボに到着するや、「○○さんですか?」と果敢に声をかけます。 「違います!」と言われたときは肝を冷やしましたが(笑) ちなみにこのときマッゾは少々酒が入っていたので、テンションがややおかしめでしたが、 パズガの方々にはとても快く対応をして頂き、感謝しております!
「実験的な試みがある」という触れ込み通り、今回はこれまでに体験したことのない システムで謎解きが進行していきます。 小謎も一つ一つが凝った作りでした。 我々のチームは序盤は猛スピードで解くも、最後で律速という、まあいつものパターン。しかし、
律速したときの対応もメソッド化すればいいじゃない!
というわけであらゆる可能性を議論し尽くした結果、見事脱出成功となりました! ここ最近はひでよしと のツートップの安定感が素晴らしく、 私はリラックスして謎解きに挑んでおります。
とにかくオープニングから、実際の謎解きの時間、そしてエンディングに至るまで、 すべてが一つの物語として丁寧に作られているという印象でした。 謎解きで物語に入り込んだ後、エンディングを見ると感極まるものがあります。 (恥ずかしいのであんまりメンバーには言わなかったけどな!)
いやー、こういうの弱いんだよなぁ (ノД`)・゜・
リアル脱出ゲームの魅力は単なる謎解きではない「物語体験」にあると私個人は思っています。 個人的には時空研究所、ポセイドン、巨大神殿、ある牢獄、オークション辺りは手法は違えど、特に物語に入り込めた感じがして好きな公演です(成功の可否とは関係なく)。 そこへきて今回の忘ラボはさらに一歩進んだ物語体験で、 そういう意味で今回、「謎が解けた喜び」はもちろんありますが、 それ以上に何といっても「物語の登場人物的に活躍できた喜び」が格別でした。
これからのヒミツキチラボにも期待です!
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